芸術新潮 2012年3月号
〈生誕100年〉ピカソよりメチャクチャ?
でも世界一高い抽象画家ポロックの見方教えます。
2012/02/25発売 定価1,400円(税込)
画面上を激しく絵具が錯綜するおなじみの技法に加え、中央部分を人物状に切り抜いた実験的試行。
《カット・アウト》 部分 1948〜58年
大原美術館蔵 生誕100年 ジャクソン・ポロック展出品作
[右]つねに新しい表現を模索するポロックが、次にたどり着いたのがステイニング。地塗りしていないカンヴァスに薄めた塗料を染み込ませ、墨絵のような趣をもつ。
《ナンバー21、1951》 部分 1951年
チューリヒ美術館蔵 生誕100年 ジャクソン・ポロック展出品作
[左]カンヴァスを床に置き、時にはその上に足を踏み込んで
制作をしたポロック。作品にもその痕跡が残されている。
《ナンバー7、1952》 部分 1952年
メトロポリタン美術館蔵 生誕100年 ジャクソン・ポロック展出品作
まずは来日中の話題作で
鑑賞のツボをおさえましょう。
【解説】大島徹也[おおしま・てつや 愛知県美術館学芸員]
まずはウォーミングアップから始めましょう。《インディアンレッドの地の壁画》をご覧ください。これはポロックの絶頂期にあたる1950年に制作された、今展の目玉ともいえる作品です。でもそういった後世の評価はいったん忘れて、絵そのものと気楽に向き合ってみてください。どんなことを感じるでしょうか?
最初に強調したいのは、古典絵画や近代絵画を観るときのように「主題は何で、どんな技法で、何を意味しているのか」などといったことは、とりあえずいっさい気にする必要はないということ。ポロック自身も、抽象絵画は音楽を楽しむように味わえばいい、と言っています。「この曲を理解してやるぞっ」と身構えてから音楽を聴く人ってあんまりいませんよね。「ふふふふんっ……」と聞こえてきた音に対して、「あ、これいいね」とか「ちょっとイヤだな」といった風に反応するのが普通で、絵画も同じこと。「これから、抽象画を見るんだ!」とか、「大丈夫かな、理解できるかな?」などと考えても仕方ありません。ましてや、「この絵の良さがさっぱり解らないオレって、現代美術のセンスないかも……」と深刻になる必要などありません。結果、好きになれなくても解らなくても、それはそれでいいじゃないですか。
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