2012/12/14

whole earth catalog

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ホール・アース・カタログ
http://www.wholeearth.com

1968年のアメリカで、スチュアートブランドという若者が編集した1冊の雑誌が出版されました。「whole earth catalog」と題されたその雑誌は、1971年まで定期的に発行され、アメリカのカウンターカルチャーとして当時の若者の文化を創ります。背景にあったのは、消費社会に対する反発です。その雑誌には、さまざまな道具の紹介はもちろん、子供の産み方、病気に対する知識、思想や哲学、有機農法、家のつくり方など、あらゆる情報と知恵が載せられていました。それは、「自らの力で」生きていく術を考え、身につけていくための道具や知識でした。主体を個人に、人間自身に、戻していくことを唱えているように思います。社会全体が国家や大企業という枠組みで進んで行く中、人間としての生き方を問いただそうとしてできた雑誌なのです。
創始者であるブランドに多大な影響を与え、この雑誌にも多く取り上げられたのが、建築家バックミンスター・フラーでした。「エネルギーには限界があり、地球を生命体として考えた時に、戦争や競争をしている場合ではない」と訴え、そのために環境負荷の少ない建築や車を考えつづけた建築家です。彼の唱えた「宇宙船地球号」という言葉を耳にしたことのある方も多いでしょう。環境と共存するための道具として、地球生命体が存続するための道具として、科学技術をとらえていったのです。若き日のスティーブ・ジョブスも、この雑誌の編集室に出入りしていたといいます。後にジョブスがアップルコンピュータを立ち上げたのも、まさに個人が使えるコンピューターを願ってのこと。「ホール・アース・カタログ」の理念を具現したものと言えるでしょう。その雑誌が出てから約50年、やっと今、私たちの意識はその意味を噛みしめようとしています。

http://www.muji.net/lab/living/121024.html 

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